EMC出張試験(オンサイト試験) 概要
試験所に持ち込みできない製品は、EMC出張試験(オンサイト試験)で対応できます。
- 装置が大きく重いため、試験所に持ち込めない場合。
- 装置を動作させるのに、特殊な電源条件(高電圧・大電流等)が必要な場合。
- 装置の搬送準備及び搬入の際に分解するため、測定以外の準備が必要となる場合。
- 装置を動作させるために、精製された水や液体及びガスが必要となる場合。
- 検査用にクリーンルーム内で使用する製品を使用するため、社外に持ち出せない場合。


SGSジャパンでは複数の測定システムを所有していますので、お客様の希望日にあわせたEMC出張試験が可能です。
SGSジャパンにてEMC測定機器、試験用AC電源ケーブル、必要であれば試験用絶縁トランスを準備し、お客様の現場にお伺いいたします。
EMC出張試験は、弊社測定技術者が、国家標準または、世界標準にトレーサブルな測定試験器一式をお客様工場等に持ち込み工場内で試験します。テストサイト/電波暗室への運搬や搬入が困難な大型機器又は特定の設置場所でのみ動作する機器(工作機械や半導体装置など)を、御社もしくは設置場所等のお客様が指定する現場に、弊社技術者が出張し、EMC試験を行います。
このように、製品が大型の場合や多くのユニットから成り立つ装置の場合には、EMC出張現場試験が最適です。SGSジャパンはEMC出張現場試験に多くの経験を持っており、高品質の評価サービスを提供しています。

EMC出張試験測定機器
EU市場へ製品を出荷される場合
EMC指令の適合が必須事項となっております。
大型産業機器の場合には、装置を製造している場所でEMC現場試験を行いEMC指令適合性実証の対応を行います。
韓国へ製品を出荷される場合
工作機械・研磨機・研削盤等は韓国のKCsマーク(自立安全確認申告制度)に対応しなければいけません。強制となっています。
アメリカ市場へ製品を出荷される場合
ISM(工業・科学及び医療用)装置は、対象規格のFCC Part18に適合する必要が有ります。
EMC出張試験 規格
規格名 | 製品 |
---|---|
EN 61000-6-4 | 工業環境で使用される産業機器のエミッション規格 |
EN 61000-6-2 | 工業環境で使用される産業機器のイミュニティ規格 |
EN 55011 / CISPR 11 | ISM機器のエミッション規格 |
EN/ IEC 60945, IEC 60533 | 船舶 |
ISO 13766-1/2 | 土木建機 |
EN 13309 | 建設機械 |
EN/ IEC 50370-1/2 | 工作機械 |
FCC part18 | ISM機器 |
EN 50121シリーズ | 電車、鉄道 |
S2-W-5-2017 | 産業装置(韓国KCsマーク用) |
現場試験は認定された試験所環境ではないために、試験項目によっては、EMC指令の保護要求事項を満たせるよう、測定手順を一部変更して試験を実施します。
装置の例
産業機械全般、自動車部品製造装置、鉄道装置、半導体製造装置(プラズマCVD/PVD装置等)、土木工作機械、建設機械、工作機械、計測制御機器、船舶、食品加工装置、液晶製造装置、太陽電池製造装置、インバーター装置等。
EMC出張試験フロー
大型機器なので、欧州EU指令の他の指令、機械指令・低電圧指令(安全業務)も同時に行なうことも可能です(CEマーキング総合サポート)。韓国KCsマーク(自立安全確認申告制度)の出張試験も行っています。
出張試験フロー


EMC出張試験風景
CEマーキングの総合サポートとは、設計図面のチェックから実機構造チェック、EMC出張試験、安全試験、レポート、技術文書作成支援、適合宣言書の雛形の提出 です。
もちろん 不明な点や質問がありましたらメール等で連絡をいただければ迅速に対応させていただきます。お客様が自信を持って製品を欧州に出荷して頂く事を第一に考えております。
お客様のご要望でEMC指令のNBの証明書発行も可能です。
SEMI F47 試験
IPC-480V-200A – 3相 480V/200A電圧サグイミュニティ試験ができます。
IPC-480V-200Aは、今までの機器と比べて下記の優れた点を持ち合わせています。
- 小型化。従来機種の約1/3の大きさ、かつ。ブースター不要による測定スペースの確保が容易。
- 正確な波形。IGBT半導体スイッチ使用。
- PC接続による波形取り込み機能。
- サーキットブレーカーによる安全機能アップ。
- 電源ケーブル接続が1度でOK.。
EU市場へ製品を出荷される場合
SEMI F47-0706は、現在でも半導体プロセス製造装置を納入する際に必要条件とされている半導体製造メーカーが大勢を
占めております。半導体産業で使用する装置のための、電圧ライドスルー能力の最低限の設計要求を指定しています。
半導体産業で使用する装置のために最低限の設計要求を指定しています。
エッチング装置 | 成膜装置(CVD&PVD) |
熱装置 | 表面処理と表面清浄 |
露光装置(ステッパー&トラック) | CMP装置 |
イオン注入装置 | 計量装置 |
自動試験装置 |
要求されるサグイミュニティ
サグデプス | 50Hzにおける継続時間 | 60Hzにおける継続時間 |
---|---|---|
50% | 10cycles | 12cycles |
70% | 25cycles | 30cycles |
80% | 50cycles | 60cycles |
サグによる影響の一例
動作が停止した為、電流値が0[A]になる
試験において記録される波形の例
周波数60Hzで0.05秒間の間50%低下 左は、試験時の写真
IPC-480V-200Aは,電圧0%から125%、時間1サイクル(16.7ms or 20ms)から34secが可能なので,IEEE1100等のCBEMAカーブにも対応できます。
F47対策/試験前に確認しておく点
マグネットコンタクター
ACでコイルを働かせるマグネットコンタクターは、その特性上定格電圧の75~85%以下の電圧に低下した際には、電磁石が接点を保持することが出来なくなる可能性があります。
F47試験では、装置が動作を続けることが要求されている定格電圧の50%まで電圧が低下した場合10ms程度で接点が外れるようです。対応方法としては、DCで動作するタイプに変更する、コイルへの電源供給をUPSが接続された系統から接続する、コンデンサを使用したトリップ回路を組み込むこと等が考えられます。
DC電源
定格電圧範囲下限の約20%低下程度までは正常に動作を行いますが、これ以上電圧が低下した場合には、正常に動作しない場合があります。
そこで、F47試験対応に使用するDC電源は、電圧範囲が85V~264Vを使用して下さい。これにより、200Vが定格電圧の装置であれば、F47による影響を回避することが出来ます。制御用に使用されることが多いデスクトップ型PCも、100V200V自動切換えタイプの電源を持っているとF47試験への対応を行いやすくなります。
UPS uninterruptible power supply(無停電電源装置)
止むを得ずUPSを使用する場合には、電圧が低下した場合の切り替え時間を、考慮する必要が出てきます。UPSには、インバータを用いた常時UPSから電力を供給するタイプ、通常時は常時設備側から電力の供給し、停電時にバッテリー供給に切替えるタイプ、そして2つを混ぜ合わせたようなラインインタラクティブタイプの3種類があります。
F47試験への対応として選択する場合には、電圧低下時のバッテリーへの切替え時間が短いもの(試験対象にもよりますが10ms以下)が必要となります。
常時商用タイプのUPSでは、一部対応していない製品も有るようですので、選択の際には注意が必要です。
プログラム
機器の中には、常時電圧を監視し停電や電圧波形歪を検出すると、通常動作を停止する機器が存在します。
サーボモータドライバに多い停電検出機能は、F47試験の際にはハード的には電圧低下に耐える能力を持っていても、プログラムが機能を停止させることで、結果として動作を終了させるためにFailとなってしまいます。
試験前にこういった確認を行っておくことが、試験時に発生する問題を少なくすることになります。
試験のセットアップ
機器の接続(1)
EUTの電源ラインにSGSサグジェネレーターを挿入接続します。
給電方式にあわせて図1(a)(b)(C)のように結線します。

図1(a) 3相3線式(デルタ結線)
図1(b) 3相4線式(スター結線)
図1(c) 単相
機器の接続(2)
図2のようにパソコンとサグジェネレーターの電源を接続します。

図2 パソコンの接続
測定機器のセットアップ
(1) サグジェネレーターの主電源をオンにします。
(2) パソコンのソフトを起動します。
(3) サグジェネレーターとパソコンの通信を確立します。(Connectボタンをクリック)

(4) サグジェネレーターの設定をします。
トリップレベル、サグ印加相、サグレベル、サグ時間、表示メーター
試験の実施
EUTが通電され、動作を開始したら、サグの印加を開始します。
試験ポイントを表1に示します。
表1のすべてのポイントについてそれぞれサグジェネレーターを設定します。
それぞれ10秒以上の間隔をあけて、各ポイントで3回サグを印加します。
これを各相間について繰り返します。
表1 試験ポイント
サグレベル[%] | 残留電圧[%] | 降下電圧[%] | サグ継続時間[%] | 50Hzの場合[cycles] | 60Hzの場合[cycles] |
---|---|---|---|---|---|
50 | 50 | 50 | 0.2 | 10 | 12 |
70 | 70 | 30 | 0.5 | 25 | 30 |
80 | 80 | 20 | 1.0 | 50 | 60 |
代表するどれか一つの相で、波形データを記録します。(50%、70%、80% の3つ)
もし、サグの印加によって中断が発生した場合には、参考データとして波形データを記録します。
判定基準: | F47-0706の7.8項に記載された様に中断がないこと。 (中断とは、アシストあるいは故障 下記参照) |
アシスト:装置の動作サイクルの中で発生し、下記の3つの条件が満たされる
予期しない中断
・中断された装置の動作サイクルが外的な干渉によって再開される。
・指定された消耗部品以外の、部品交換が無い事。
・発生した現象以上に、装置の動作仕様から逸脱しないこと。
故障:予期しない中断あるいはアシスト以外の装置オペレーション仕様からの逸脱
SEMI E6 Data Sheet 400
弊社ではSEMI E6データシート400「電力」の測定が可能です。測定器に電源ラインを接続するだけで(図1参照)、SEMI E6データシート400で記入が求められている「平均実行電力(アイドル、プロセス、最大値)」、「平均皮相電力(アイドル、プロセス、最大値)」、「平均電流(アイドル、プロセス)」、「最大電流」、「全高調波電流歪み」、「プロセスサイクル時エネルギー」を測定できます。(図2参照)

図1.接続例

図2.測定結果例
また上記データと共に提供が求められている「電力特性評価プロット」も測定可能です。(図3参照)

図3.電力特性評価プロット
このグラフは装置のアイドル時から各プロセスモードの電力値を時間軸に沿ってプロットしたもので、各プロセスモードごとにグラフの色を変え表示することが可能です。
この他にも、アイドル時から各プロセスモードにおける皮相電力、最大電流、サイクル時エネルギー等を時間軸に沿ってグラフで表すことが可能です。
EMC設計・対策(大型装置の場合)
フィルタリング(ノイズフィルタ等の設置)
(1) メインブレーカ2次側近くにノイズフィルタ等を設置すること。
特に、インバーター、サーボ使用機器は インバーター・サーボ用ノイズフィルタをメインブレーカ2次側近くに設置する。
(2) インバーター、サーボの1次側(インバーター等近く)にフィルタ等を設置する。
対応インバーター等はフィルタと一緒に設計して対応している場合があるので注意が必要です。部品メーカーのカタログをよく読むこと。
上記(1)(2)両方実施すること。理由は(2)インバーターのEMC規格は、産業機械のEMC規格よりゆるいため、(2)のみだと産業機械の限度値を満足しない場合がよくあります。したがって産業機械の規格を満足させるためには(1)も必要になります。
【参考】
なお配線で、フィルターの1次側と2次側とはしっかり分離させ、交差等しないことです。
シールディング
(1) ノイズを多く含むインバーター等の交流ケーブルはシールドし、両端をおとすこと。(インバーター側、モーター側とも)
(2) 制御盤の扉はフィンガー等を使い、シールドすること。数cmのフィンガーを約10cm間隔でもOKです。(インバーター使用時は特に)
制御盤の扉を開けたところ
(3) ノイズを多く含むインバーター等の交流入出力ケーブルの制御盤からでるところは、ケーブルシールドと制御盤金属板をクランプでしっかりグランドにおとすこと。(モーター側も同様が望ましい。)

(4) 装置間のケーブルはメタルコンジットが望ましい。
電線配線
(1) 電源AC/DCと、信号線は、分離してはなして配線する
(2) ノイズフィルターの1次側と2次側とはしっかり分離させ、交差等させないこと。


1次側と2次側とはしっかり分離させ、交差等させない
その他
(1) 対策部品 | ジッパーチューブ(ケーブルをシールドする) リングコア (フィルタリングの役目、低域数百kHz-数十MHzに効果) フェライトコア(数MHZ以上300MHzまでに効果) |
(2) 参考文献 | 『EMC入門講座』 電波新聞社 著者SGSアールエフ・テクノロジー池上 他 |
EMC対策としてのコア
PART1.なぜノイズが減るのか?
コアによるノイズ低減効果には、4つの側面があります。
(A)コア挿入により電線のインダクタンスが増大して、ノイズ電流が減る。
(B)ノイズ周波数での共振を回避して、ノイズレベルが下がる。
(C)ノイズエネルギーがコアによる損失で熱に変わる。
(D)電線から放射される磁束を封じ込めて空間に放射するレベルが下がる。
ノイズ対策として期待する効果は、(A)の場合が殆どです。
(A)の場合は、2つの現象の兼ね合いでその効果が決まります。一つは、ノイズ源の内部インピーダンスと電線との不整合の度合いです。コアを取り付けることで不整合の度合いが増せばノイズは減ります。もう一つは、コア取り付けによるインダクタンス増加分での電圧降下により、ノイズレベルが下がります。
(B)の場合は、ノイズ周波数で電線が共振している状態、あるいは共振しているためにノイズがのり易くなっている状態の時には、コアを挿入することによりその周波数では共振しなくなってノイズが減ります。しかしこの効果は、コア挿入によって共振周波数がシフトするために得られる効果であって、シフトした周波数にノイズがあれば、その周波数でのノイズが大きくなります。
(C)の場合は、ノイズエネルギーがそもそもどれほどあるのか、熱に変換されて何℃に達するのか、複雑な問題が絡んでいます。熱に変換されることを期待してコアを取り付けるものではありません。
(D)は、コアというよりも磁性材料を編みこんだ電磁波遮断シートなどに期待する効果です。もちろん局所的には効果があります。放射している電線の一部にコアを挿入したとき、(A)や(B)の効果によってノイズレベルが低減することはあります。
図1

(1) ノイズ源からみたインピーダンスZnが大きくなり、ノイズ周波数で駆動できなくなる。
(ノイズ源内部インピーダンスとの不整合)
(2) ZL/Znでノイズが小さくなる。(コアのインピーダンスによる電圧降下)
ZLとの共振により、逆効果となる場合がある。
いずれにしても、ZLやノイズ源の内部インピーダンスは通常は不明です。
コアを挿入してみて、その効果を確認することになります。
図2-1

共振周波数 f =1/2π√(LC)の固有振動数をもつ回路系(必ずしも意図した回路とは限らない)に周波数 f のノイズが加わると、ノイズレベルは大きなものとなります。もちろん電線をまっすぐにしてしまえば共振はしなくなります。(Cはゼロに近くなり、共振周波数 f はとてつもなく大きくなる)
しかしストレーキャパシタンスというものは全方向に作用しており、複数の線で共振を形成しているかも知れません。あるいは、導体の壁と共振を形成しているかもしれません。
図2-2

共振周波数 f =1/2π√(LC)の固有振動数をもつ系にコアを挿入することにより、
L⇒L’となり、周波数 f ⇒f’となる。通常 f より f’の方が低い値となります。
図2-3

導電体の壁に密着させることも対策として有効です。
導電体と密着させることによって、電線のストレーキャパシタンスが大きくなります。キャパシタンスが大きければ、電線内部の高周波電流は密着させた導電体に流れます。導電体が高周波的にグランド電位であれば、高周波だけ選択的にグランドに接続していることになります。これはいわゆるパスコンと同じことです。この場合は、密着させる導電体が高周波的にグランドであることが大切です。
EMC対策としてのコア
PART2.どんなコアをつかえばよいのか
コアを使ってノイズを低減できることがわかっていても、どんなコアをどのように使えばよいのか、間違った使い方をすると発熱したり、電線がちぎれたりする可能性があります。数あるコアのなかから、何を選択すればよいのか、単にコアといっても色々あります。最も簡単なのは、EMC用コアとしてラインナップされているカタログから、適切なものを選ぶことです。コア選択の考え方を掲載しているホームページもあります。しかしながら、高電圧または大電流の電線にコアを使おうとする場合は特に、発熱など留意しなければならない事項があります。
コアの主な仕様は、
(A)大きさ、形状
(B)透磁率、損失係数、AL値
(C)飽和磁束密度、キュリー温度
(D)抵抗値、コーティング
(A)大きさは、当然のことに筐体内に入るか、どのように配置するかということで適切なものを選択することは勿論ですが、他の条件も考慮して総合的に判断する必要があります。
形状についても様々で、ロッド型、平板、ポット型、EI型、トロイダル(ドーナツ)型などがあります。
(B)透磁率、損失係数、AL値は、EMC対策用としてのコアのカタログには、掲載されていないことがあります。コアの型式毎に使用周波数範囲や使用条件が記載されていて、それらを参照して適切なコアを選択しても十分です。但し、どのコアが一番効果的かを検討するにはこれらの値や特性を確認します。
(C)飽和磁束密度は、コアの最大許容電流と読み替えて考えても差し支えないでしょう。飽和磁束密度を超えないように十分なマージンをとっておくことが大切です。また、キュリー温度は、その温度に達すると透磁率が急激に減少します。こうなるとインピーダンスが減少して、EMC対策としての機能を果たさなくなるばかりでなく、加速度的に発熱-温度上昇してコアが割れたり電線の被覆を溶かしたりすることがあります。自身の発熱や環境温度を考慮してキュリー温度が十分に高いコアを選択するなど配慮が必要です。
(D)コア材質の抵抗率は、1Ωm以下のものから、数MΩmのものまであります。抵抗率が低いものは、絶縁コーティングが施されているものもありますが、施されていないものもあります。絶縁物だと思い込んで扱っていると、特に高インピーダンス回路や高電圧回路で思わぬ故障や性能劣化を招く恐れがあります。
図1
![]() |
![]() |
![]() |
平板コア クリップで挟むようにしているものが多い |
ロッド型 磁束を放射する。 EMC対策には不向き。 |
トロイダル型 磁束を放射しにくい。 EMC対策に向いている。 |
平板コアは平行線に装着するには都合が良く、平行線の太さや幅でサイズを選択することになります。ロッド型は、いわゆる丸棒形状のことです。AMラジオの中に入っていることもあります。これはEMC対策に使えないこともないですが、むしろアンテナであって、EMC対策としては不向きです。棒内を通る磁束が先端から放射されるからです。EMC対策としてよく選択されるのはトロイダル形状のものです。これは磁路が閉じられていて磁束が漏れにくく、EMC対策に適した形状です。トロイダルを真っ二つに割った形状で、配線接続済みの電線に簡単に装着できるタイプもあり、対策用としては有用です。巻きつける線材の太さや巻数などによって適切な大きさのコアを選択することになりますが、大きさによって性能が違ってきますので総合的に判断することが必要です。
図2

透磁率は、磁界と磁束密度との比例定数で、コア材料のパラメーターです。
磁束密度=透磁率×磁界 の関係があります。この透磁率が大きいほど、大きなインダクタンスを得ることができます。透磁率は周波数によって変化しますので、特性図を見て選択します。インピーダンス-周波数特性として記載されている場合もあります。
上図の場合、このコアを3ターンで使えば30MHzではより効果的であるが、100M-400MHz付近では注意が必要であることがわかります。
損失係数は、tanδやQとしてその周波数特性図がカタログに掲載されています。ノイズエネルギーを損失させ、熱に変換することを検討するのであれば必要なパラメータですが、それは賢明な選択ではありません(PART1参照)。損失が大きすぎるものは避けた方がよいでしょう。
AL値は、単位巻数でのインダクタンス値の指標です。一つの周波数で取り上げた代表値です。
図3

磁界(H)を横軸、磁束密度(B)を縦軸にとったB-Hヒステリシスカーブで透磁率の変化の様子がわかります。いくら磁界を強くしても、それ以上磁束密度が増えなくなります。これが飽和磁束密度です。この特性は、コアによって様々です。飽和磁束密度(Bmax)を超えるような使い方は、危険です。電線を流れる電流と磁束密度の関係は以下の通りで、飽和磁束密度から使用最大電流を求めることができます。
Imax=Bmax×Lmin÷(μ×N) | Lmin | :コア内径の周長 |
μ | :コアの透磁率 | |
N | :電線の巻数 |
特性カーブが横に傾いている部分では、損失が大きく、透磁率も低いのでEMC対策としての機能も期待できません。十分に余裕がある状態で使うことが重要です。
図4

例えば、体積抵抗率0.3Ωmのコアがあります。活電部とシャーシー間でちょうど1cm立方のコアがどちらにも接触しているとします。このとき活電部とシャーシー間に300Ωの抵抗を接続したのと同じになります。活電部が100Vrmsとすると、約33Wをこのコアで損失していることになり、異常加熱して壊れるか、周囲に被害を及ぼすことになります。この例の場合は、漏洩電流も増大します。高インピーダンス回路の場合は低インピーダンスになってしまいます。
SGSジャパンでは、豊富な経験と実績をもとに、トータル的な無線試験・EMC試験サービスを提供しております。
また、当試験所は、世界で認められた第三者試験機関であり、CE、FCCはもと