EMC指令 早わかり
1.EMC指令の歴史
旧EMC指令89/336/EECは指令91/263/EEC, 92/263/EEC, 93/68/EECによって改正されてきました。1996年からEU圏内市場にだす前にそのEMC指令の要求を満足しなければならなくなりました。1997年にはヨーロッパ委員会は非公式なEMC指令ガイドを発行してきた。その後ヨーロッパ委員会はその旧EMC指令の改定草案を作成するため作業部会を設立しました。1999年以降審議した結果、ヨーロッパ委員会は今のEMC指令のドラフト版をWeb-siteに掲載し旧指令89/336/EECを置換することを提案しました。
そして2004年12月15日にEMC指令2004/108/ECがEU官報に公表され、2007年7月20日より適用が開始され2009年7月20日より強制になりました。
2. EMC指令2014/30/EUの概要
①EMC指令 2014/30/EUへ
2016.4.20以後に流通する機器は EMC指令(2014/30/EU)にて手続きを行う必要があります。
②EMC指令 2004/108/EC⇒2014/30/EUへ
2004/108/EC

今までの問題点
・通知機関(notified bodies)の水準のばらつき
・各指令間の一貫性の整合性が不十分
・市場監視(market surveillance)ルールが不明確

・市場監視(market surveillance)ルールの明確化、強化
市民を安全でない、不適合製品から守るために・・
- ⇒製造業者、代理人以外にも輸入業者、流通業者も責任をもつようになります。
- ⇒製造業者、輸入業者は製品へ名称、登録商標またはトレードマーク、連絡先住所の表示が必要です。
- ⇒サプライチェーン内各事業者は製品の供給元、供給先情報を要求があった場合に示せなければなりません。
- ⇒市場に投入した機器が適合していないと判断した場合、リコール、回収などすぐに実施できなければなりません。
また、流通させた国の当局への連絡もする必要があります。
・適合性評価機関に関する要求事項の明確化
- ⇒明確なルールを通じて適合確認の品質改善
③適合性評価手順
必須要求事項に対する装置の適合性は以下の手続きのいずれかによってこれを証明しなければなりません。
- 付属書Ⅱに定める(モジュールA:内部生産管理)
- 付属書Ⅲに定める内部生産管理に基づく型式への適合(モジュールC)を受けたEU型式検査(モジュールB) 新EMC指令と旧EMC指令では言葉の違いはあるものの大きな変更はなく付属書Ⅲに定めるEU型式検査は任意です。 今までと同様に付属書Ⅱ(内部生産管理:モジュールA)による自己宣言が可能です。【適合ルートの選択】
技術文書、適合宣言書は装置の市場投入後10年が経過するまで保管しなければなりません。
④製造業者の義務
- 技術文書、適合宣言書の保管、監視当局の要請に応じて文書の提供
- 市場投入する装置に製造業者名称、登録商標または登録トレードマーク、連絡先住所(製造業者に連絡がとれる1箇所)、型式、バッチもしくは
シリアル番号または装置識別を可能にする他の要素を表示しなければならない。装置上に不可能な場合は梱包材または添付文書上に表示します。
これらは、エンドユーザーや市場監視当局が容易に理解できる言語で表示しなければなりません。また、WEBアドレスを表示することも推奨
されています。 - 消費者、エンドユーザーが容易に理解できる言語の取扱説明書、居住地域では必須要求事項が確保されない装置についてはその使用上の制限に
関する明確な表示を装置に添付しなければなりません。 - 市場で入手可能にした装置が本指令に適合していないと考えるか、そう確信する理由がある場合、直ちに必要な是正措置を講じその装置を適合
させるか、これを市場から引き上げるか、または、必要に応じリコールを行うことを確保しなければなりません。
⑤名称変更、追加された言葉について
主なものを下記に示します。
- EC適合宣言書(EC declaration of conformity)→ EU適合宣言書 (EU declaration of conformity)
- ステイトメント(Statement)→ EU型式検査証明書 (EU-type examination certificate)
- 事業者(economic operators):製造業者、代理人、輸入業者、流通業者を意味する。
- 輸入業者(importers):EU域内で設立され第三国から輸入した装置をEU市場に投入する自然人または法人
- 流通業者(distributors):サプライチェーン(供給網)の中にあって製造業者または輸入業者以外で、市場で装置を入手可能にする自然人または法人
⑥技術文書
【技術文書は下記要素を含めるものとする】
- その装置の一般的説明
- 概念設計および製造用図面、ならびに構成部品、サブアセンブリー(部分組立品)、回路等の構成
- 図面および構成、ならびに装置の操作を理解する上で必要な記述と説明
- 全面的または部分的に適用され「欧州連合官報」にてそれへの参照が公告されている整合規格の一覧、これらの整合規格が適用されていない場合は本指令の必須要求事項を満足させるために採用された解決方法の内容説明、これには適用された他の関連する技術仕様一覧を含む。
整合規格を部分的に適用している場合、技術文書にて適用箇所を具体的に示すものとする。 - 実施した設計上の計算や試験等の結果
- 試験報告書
⑦適合宣言書
【EU適合宣言書記載事項】
- 装置モデル/製品(製品、型式、バッチまたは製造番号)
- 製造業者またはその代理人の名称および住所
- この適合宣言書は製造業者の単独の責任の下で発行される。
- この宣言書の対象(追跡を可能にするため装置のID、装置の識別に必要な場合には、十分に明瞭なカラー画像1つを含めることができる)
- この宣言書の上記対象は、以下の関連するEU整合法令(指令番号など)に適合している。
- 適合宣言に関連のある、使用されている関連整合規格への参照(規格の日付など)、または他の技術仕様書への参照
(仕様書の日付など) - 該当する場合、通知機関(notified body)の名称・番号、(介入内容の説明)を行い、よって証明書を発行した記述
- 追加情報:署名(代表者または代理人):名前、職務、発行地および発行日
適合宣言書は装置が市場に投入され、または市場で入手可能にされる加盟各国で必要とされるひとつまたは複数の言語に翻訳されなければなりません。
⑧新指令・旧指令で変更がない項目の例
- 適用範囲、必須要求事項、製品、固定設備に関して、見本市、展示会などでの展示、デモンストレーション手段